認知言語学を英語で学ぶ

今日は少し自分にねぎらいのことばを。

博士候補になるために、「技法科目」というのがある。専門分野を深める上での必要スキルを習得するという発想なのだが、僕の専門は、ネットワークガバナンスというプログラムなので、専門があってないようなものだ。

簡単に言うと、ネットワーク社会の組織などのガバナンスを考えるということなので、組織論、情報技術、戦略論、ゲーム理論、メディア論、社会学、経営史・・・を広く浅く学ぶ傾向がある。それで、いわば消去法で技法科目として選択されたのが、結局英語(英語で何かを学ぶクラス)だった。

で、厄介なのは相対評価でAを取らないといけないということだった。割合としては15〓20%程度で、指定された英語のコースは相当レベルの高い人が少人数(30人弱)で受けるコースなので、上位5〓6人に入らないといけない。しかも問題はこの学校はグループワークが大好きで、5〓6人でプレゼンテーションをさせる。すると上位1グループに入らないといけない。

で、昨日は自分たちで企画したリサーチの結果を発表するという2回目のプレゼンテーションで、世界的にも有名な認知言語学のT先生から「もう安心しても良いですよ。このリサーチと結果であれば、学会発表しても良いぐらいだ。専門が言語学とは違う人でグループが構成されているようだから、聴講生のNくんにでもやってもらえばよいかな」という評価を得た。まだ最終のレポート課題があるが、何とかなったのではないだろうか。

幸い、もう一人同じ境遇の博士学生がいたので、タッグを組み、学部生に対する指導とマネジメントが10月から始まった。幸いなことにわれわれのグループはメンバーのバランスが取れていた。企業で約款改定の仕事をしていたものすごい几帳面な博士学生、一般言語学を専攻する修士学生、英語が好きで従順な女子学生(複数)、他大学から聴講に来ている英文学専攻の学生、そして計量的分析とプレゼンテーションツール作成とプロジェクトマネジメントとプレゼンテーションのプロである私だ。

初回のプレゼンテーションでは「この論文は最高の論文だが、わかりにくすぎて絶対教材には使わない」とアメリカの某言語学者も言う、T先生の「2重目的語をとるGIVEの与格交換」についての論文に対して、わかりやすいスライドを80枚作り、70分でプレゼンした。T先生も「なるほど、こういう風に表現すれば、わかりやすくなるね。すばらしい」と言ってくれた力作だった。もちろん論旨の把握についてはみんなで議論して、私はそれをわかりやすく表現しただけだったが。

道中、思い出はいろいろあるが、突っ走りがちな博士2人に対して学部生が抱きがちな「ついていけない」という気持ちを生まないようにという点に一番気を配った。こんなことは入社1年目の仕事で、ある商品の広告企画を立てるときに、私のいた会社が持つ巨大な消費者調査のデータを使っていちから積み上げ式で作業をして、部長に「そんなことやっても無駄というか、そこまでやる必要ない」と言われて以来の経験である。最近はひたすら、大枠を作ったらあとは部下任せだったからなぁ。

で、内容的にも認知科学とつながる認知言語学の基礎がわかったことは収穫があった。しかし、こういう分析をアルゴリズムに落とすってのは本当に大変だな。