ウィキペディアと関連書籍

集合知を語る上では良い事例だと思うので」ということでウィキペディアをテーマに研究している学生がいる。きっちりとデータベースを使って文献サーチをするような学生なのだが、直接にウィキペディアを扱った日本語の本がないということで苦労していた。が、いくつか出ましたよ。


ウィキペディアで何が起こっているのか―変わり始めるソーシャルメディア信仰

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グーグルとウィキペディアとYouTubeに未来はあるのか?―Web2.0によって世界を狂わすシリコンバレーのユートピアンたち

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ウィキペディア革命―そこで何が起きているのか?

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  • 作者: ピエールアスリーヌ,フロランスオクリ,ベアトリスロマン=アマ,デルフィーヌスーラ,ピエールグルデン,Pierre Assouline,B´eatrice Roman‐Amat,Delphine Soulas,Florence O’Kelly,Pierre Gourdain,佐々木勉
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2008/07/25
  • メディア: 単行本
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在庫がなくて1番目のものは入手できていない。2番目についてはアメリカの事例が豊富。むしろ事例の羅列という感じで4章以降は論理の展開がなくて飽きたが、筆者の主張には考えさせられる。


それは、Web2.0でアマチュアども(原題はthe cult of the amateur)によって発信されているくだらない情報が世の関心を奪ってしまっているため、放送、音楽、ジャーナリズム、本などを生業とするプロの居場所が脅かされている。そして、プロの仕事を参照しながら情報を発信する相対的にまともなもの(Filter Blogなど)も、プロが居場所を失うことでの参照元情報の質低下から衰退し、結局身の回りのどうでもよいものの比率はさらにあがる、というようなものだ。


オープンソースプロジェクトとか、「ウィキノミクス」で紹介されるような、量が質に転化するような話は、ブログとかYoutubeとかにはめったにないわけで(まあ、オープンソースウィキノミクスでの事例もめったにないものが取り上げられているわけだけど)、このあたりはサービスを体感している者としては悩むばかりだ(私の講義でのトーンも年とともに変わっている)。言い切り型の評論家やウェブのサービスをいじっていないお年を召した先生たちがうらやましい。


3番目については、よく調べており、有名なネイチャーの記事の批判的検討など参考になる。また木村忠正さんの長い解説「ウィキペディアと日本社会 集合知、あるいは新自由主義の文化的論理」が参考文献リストも豊富で論点も面白い。『「みんなの意見」は案外正しい』を批判する文脈での以下の部分のみを引用しておく。

Web2.0ウィキノミクスの議論は、「三人文殊知」、「フィードバック知」、「マイニング知」を截然と区別せず、利用者参加をナイーブに礼賛するかのような印象を受ける。