ノルゲ

ノルゲ Norge

ノルゲ Norge

妻の1年間のノルウェー留学に同行した際の滞在記。「おれ」という一人称で書かれた文体にはじめ少々戸惑うが、身近な人びととの交流を描く佐伯一麦らしさは随所に感じられ、また異国、さらにはなんらの社会的身分を持たない帯同ということが彼の持つ弱さを増幅させる。


それでも「歓喜の五月」、「ノルゲ!」という最後の2章では、著者も知らなかったノルウェーの色彩の豊潤さが描かれ、すがすがしいラストを迎える。暮らしについて見直したくなる時に私が読みたいと思う作家。