モネ大回顧展@国立新美術館

企画に5年かけたそうだ。ということで、一部の美術館からの貸与はなかったようだが、錚々たるラインナップ。


モネは私にとっては特別な画家ということもあり、一部屋目の「モンソー公園」で早くも「あー、パリに行きてー」となる。「アルジャントゥィユのセーヌ川」でこの気持ちはさらに昂ぶるが、「ボルディゲラの別荘」、「マルタン岬から見たマントンの町」、「アンティーブ岬」でやはりコートダジュールかな、となる。


しかし、今回の1枚を選ぶとすれば「ポール=ドモワの洞窟」だ。海の色からしてノルマンディーかと思い、調べたら、Port-Domoisはブルターニュ半島の南側にある島に存在するらしい。原題はLa grotte du Port-Domois。推測が当たっていたこの大西洋に独特の透明感ある群青色がとてつもなくきれいで、しばし見入っていた。絵はがきも買ったが、残念ながら、こちらは全然青がうまく印刷されていなかった。


またこの展覧会を通じて考えたのは、私は行ったことのある場所の絵しか味わうことのできない人間なのではということ。厳密な場所こそ違えど、ブルターニュの海の青さは見たことがあるし、それが地中海のそれとも違うことも知っている。モンソー公園を散歩する人たちやサンラザール駅を行きかう人たちを想像することは容易であるので、それらの絵を見ているとその空間に自分が存在するような錯覚にとらわれることもある。


しかし、行ったことのないGivernyの睡蓮やPont de Japonの連作を見ても、綺麗だなとは思うのだが、絵と対話している感じにはならないのだ。たしかにMomaの睡蓮によって私は癒されたのだが、それは私の精神状態が特殊だったからではないか。そんなことを感じた。