リスクとはそういうものである

最近、役職柄(柄にもなく)会食なんてのが増えている。今週は、某大企業のボードメンバーを引退し、関連企業の社長に転じられた方とお会いしたのだが、そこでこのような話になった。

彼は3年前にある大学の教授としてのオファーを受けたのだが、その給料が当時に役員として貰っていたそれの半分以下になってしまうことが怖くて、そのオファーを断ったのだそうだ。そして現在後悔しているという。関連会社の社長といっても、連結対象なので自分の裁量で動かせる部分が少ないのだそうだ。もし、3年前に大学の教授の職に就いていたらもっと自由にできたのでは、というのが後悔の理由だとおっしゃっていた。冷静に考えれば、半分になった給料でも世間相場からすれば十分なものだったのに、ともおっしゃっていた。

その方は、以前の会社では既存中核事業以外を担当され、常日頃から「単年度のPLを見てはだめ。成長率やBSを見ないとだめ。インタンジブルな価値も見ないとだめ」と言っていた方であった。なのに自分個人のことになるとそれができなかったということになる。3年たってしまった今、当時テイクできなかったリスクが高くついているというわけである。

ちなみにその方は、現在、その関連会社において自分の裁量で動かせる部分を増やすために奔走されている。要はもう一勝負というわけだ。さて、3年後、彼は今の後悔を消し去ることができているのだろうか。「その後悔を消し去っていてくださいね」と二回り近くも先輩である彼を激励して別れたのだった。