滞在最初期の印象(San Diegoにて)

陽射しは強いが昼間の気温は24度を超えることはほぼない。朝晩は15度ぐらいまで下がるので、やや肌寒い。到着後3週間ほどで、雨が降ったのは1日だけ。それもわずか2時間ほど。乾燥地帯で私の体に必ず起きる朝方の喉の痛みが出た(今はOK)。それがSan Diegoの気候である。ちなみに盛夏でも気温が30度を超えるのは珍しい。冬でも日中は15度まで上がる。これが、この地がPerfect Weatherを持つと言われる所以だ。日本での3月中旬から5月、梅雨時を飛ばして7月初旬までを、それも春以降の湿度を割り引いて往復しているのに近いと思う。


空港に降り立ったときの印象は、妻の実家がかつてあった北九州空港(古いほう)に近かった。福岡空港よりは明らかに田舎な感じ。それでもSANは国際空港で、近々BAがロンドンとの間に直行便を就航させるという。レンタカーを借りて、今回の所属となるUniversity of California, San DiegoのあるLa Jolla方面へ走ると、思ったよりも緑が多く起伏に富んだ景色のなか、20分ほどでUniversity City(通称UTC=University Town Center)に到着した。


まあ、この3週間とてつもない量のTo Doをこなしてきたのだが、それについては書かない。またまだUCSDの方にはほとんど行っていないので、それについても今回は除外する。そのなかで総括すると「年を経たなぁ」というのがこの間に非常にしばしば感じた気持ちである。


1つは自分の経験の上積み。まあ年を重ねたということだ。Californiaはもちろん米国で長期にわたり暮らすのははじめてだが、「相手が何を要求しているのだがまったくわからん」。「そんな風に考えるとはまったく想像がつかなかった」ということはない。たとえば、ファーストフード店で「To go or for here?」と言われたり、スーパーマーケットで「Paper or Plastic?」と言われても、それは経験済みである。これは23年前の初な私がフランスに行った時とは全く違う。当時のフランス語力に比べて、今の英語力の方が上だというのもあるが。


もう1つはメディア環境の変化。23年前は、日本に居ながらにして調べられることには限界がありまくりだった。全て現地に行って、更に別の書類が必要ということが初めてわかるということも多々あった。ところが、今回はそういうことにはお目にかかっていない。


今住んでいるアパートも先輩のVisiting Scholarの人から情報を得て、Webの物件情報とGoogle Street Viewを頼りに、仮契約まで済ませておいたことに象徴されるように、かなりの部分まで日本でできた。アパートについては気になっていた騒音を現地でチェックして、その後すぐに契約した。銀行の支店にしろ小売店舗にしろ、何にしろ全部Webに地図があるから、なかなか難しい電話のやりとりなしで現地に行ける。逆にホテルからアパートに移り、ネット無しの2日ほどが異常に心細かったわけだが。


ただし、このように概ね順調にコトが運んでいるのは、ここの人たちがとても寛容だからである。これは私がCaliforniaに住みたいと思った最も強い動機の1つだが、東の人たちのように、特にNYなどの都市部にある、せかせかしたそしてどことなくアジア人を見下した態度はない。特に、この地域は所得の高い層が住んでいることもあり、みな心に余裕がある。「黒い黒人」にはほとんど出会わない。「年を経たなぁ」ということに関して言えば、23年前のフランスと違い、日本人はここではむしろ少数派で、さらに言えば、韓国人はまだ顔の形から識別できるが、中国・台湾・日本人の区別はできにくくなっている。特に女性は同系列の化粧をしていることもあるので。もう日本は東アジア圏に限っても唯一の先進国ではないのだ。


最後にちょっと自分の専門についての印象を書くと、Smart Phoneの利用とそれに対応する最強のアプリケーションであるSocial Mediaへの諸組織の取り組みの本気度合いを感じる。これだけであれば、日本との差は程度問題かな、と思うのだが、驚いたのは、Appである。PC Web以外に、Smart Phone向けのAppをかなりの割合で広い分野の企業が消費者に対して提供している。特に小売がそうなのだが、日本ではそういうことはまだ起きてないでしょ。だとすれば、ソーシャルゲーム以外の法人向けApp開発企業のスタートアップがもっと日本でも出てきて良いはずだからね。


だとすると、きっと課金方法が電話に近くなるはずなので、ひょっとするとAppは一大経済圏になるかもという印象を持っている。日本にいたときは、アメリカがFrom Web Economy To App Economy(になるよ)というのには、ピンと来なかった今は言っていた意味がよくわかる(もちろんなるかは知らんよ)。


来週はSocial Media Marketingを専門とする若いLecturerを、UCSDのRadyというB-Schoolに日本企業からの派遣できている人に紹介してもらうのだが、そんな話もできればと思っている。若い友人を作らんとSocial Mediaなんてわからんからなぁ。