はてなブックマーク(ゲスト講義)
ソーシャル・ブックマーク(SBM)というのは、学生の利用率が低いサービスで(はてブユーザーは20代後半から多くなり、これは仕事での情報収集の必要性と関連しているのではないかという川崎氏の分析)、事前に「いじってみておいて」とは言ったものの、ピンと来るかなと不安視していたテーマであった。
だが、それは杞憂であった。
というのも、非常に多くの学生が「情報を介してゆるくつながる」という、はてブのコンセプトに強烈に惹きつけられたからだ。単に新しく聞いたことばに興味をもっただけかもしれないし、ひょっとすると、ケータイメール、チャット、SNSなどに少なからず彼らが疲れているからかもしれないが、はてなヘビーユーザーである学生の感想文には、「はてなスターのような、足あととは違い自動的には残らない、それでいて非常に簡単に感想を残せる仕組みが良い」とあった。事実、この機能は川崎さんたちの予想を超えて好評と共に迎えられたそうだ。
私のSBMの使い方は、個人的な資料保管庫であり、集合知を利用した資料保管庫である。つまりフロー情報として「おもしろ」であってもBMはしない。将来にものを書くときに参照する可能性のある(と現時点で想像できる)ストック情報として価値があると判断したものを基本的にBMしている。事実、検索機能もよく使う。なお、SBMに登録された情報をストック情報として活用するアイデアについてはタグを起点にしたクロールの可能性 - 観察・実験ノートで昨年ちょっと書いています。
翻って、「情報を介してゆるくつながるコミュニティ」というような機能を積極的に活用しているとは言えない。お気に入られユーザーは23名いるが、お気に入りユーザーは6名にとどまっている。興味関心の近い人を増やそうとは特に思わないのは、情報処理量がついていかないのと(お気に入りユーザーのBMは週に1,2度は見る)、いざという時は、はてブ全体のBMから検索するというのが基本動作になっているからだ。でも、川崎さんは私のお気に入りユーザーの1名で、こうしてゲストに来てもらえるのだから、「情報を介してゆるくつながるコミュニティ」を「積極的に」活用するという発想が矛盾しているのかもと書きながら思った。
授業中にも言ったことだが、「情報を介してゆるくつながる」という話から思い出したのは、Mediated Artifactという概念だ。ちょっとググったら、私が事例研究をしている「関心空間」のファウンダーである前田邦宏さんのページがひっかかった。確かに彼も「情報(人工物)を介した心地よいコミュニケーション」というのを志向していたからなぁ。
さて、ちょっとだけ最後に講義内容についてのメモを開示しておくと、はてなBMの問題として彼らが意識して対処しているのは以下の4つとのこと。
いまだに無断リンク問題があることに驚いたが、全てが古典的な問題ですね。
なお、講義で川崎さんが紹介していた"The Wisdom of Crowds"には翻訳がありますので、興味ある学生はどうぞ。ちょっと集合知礼賛の色が出ているが、まずはここから入るのではと考えます。
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