複雑さを生きる

休暇で読んだ本の1冊。安冨歩さんは面白い研究者だとかねがね思っていたので、読みやすそうなものを手にとってみた。

複雑さを生きる―やわらかな制御 (フォーラム共通知をひらく)

複雑さを生きる―やわらかな制御 (フォーラム共通知をひらく)


ルーマン流の、コミュニケーション(関係性)を基本単位とする社会の捉え方。コミュニケーションの要件は、「意図」、「行為」、「解釈」だと解く。


彼が展開する論理の中で重要なのがハラスメントという概念。「ひとがコミュニケーションを実現するために形成する信念、すなわち相手も自分と同じ世界を持っているだろうという信念と、その信念を基盤として相手を理解するための理論を構成しようという努力を悪用し、他者を操作しようとすること」である。厄介なのは、ハラスメントによって搾取された人間が、往々にして同じ操作を別の他者に向ける伝搬性を持っていること。わかるなぁ。


ハラスメントはコミュニケーションの本質に関わるものだから、なくなる可能性はないが、それでもハラスメントという状態を回避するための方法はある。各人が自律して、自分の学習過程の作動をとめないこと。わかるなぁ。でもこれはなかなか難しいよ。


読んでいて、これは恩師の金子郁容の言っていることと似ていると途中から感じていたのだが、最後の部分で、「ネットワーク組織論」を安富が引用していた。納得。かなーり、自信を持って理解したといえる1冊。