中田英寿のことば

日経新聞が「W杯にかける」という特集記事で中田英寿へのインタビューを元旦から3日に分けてまとめている.「改めて」,だが,世界を知る彼の観察眼と分析能力と仮説構築能力と想像力と言語化能力と実行力の高さに驚嘆したので書き留めておこう.

98年は誰一人,W杯がどんなものか知らなかったし,一つの戦いを次につなげる余裕もなかった.ひたすらやれることを精一杯やったチームだったと思う.気持ちの部分では一番強いチームだった.

今回は先頭に立ってどうこうというよりも,いかにチームをうまく動かして最大限の力を出すか,ということが一番の課題になると思う.ジーコ監督の下で4年やってきて,それが一番うまく回る感じ.正直,攻撃に専念できた98年が一番楽しかったけれど,今の役割も面白さを感じている.

高いレベルを長く保てないのは自分を常に厳しい状況に置いておけないからだと思う.一番の原因は気持ちの問題だ.18,19歳のころの僕を知る人間は,精神論をぶつ僕を見て驚くと思うけれど.


ジーコが最大の課題と指摘する決定力不足とは別に中田はこうチームの課題を指摘する.

僕がより気になるのは全体としての守備力.トルシエ時代の選手も多く残っているのに,2002年同時のチームの一番の良さだった守備力がうまく継続されていない気がする.

敏捷性や頭の回転の速さは日本は優秀な部類に入る.その良さを生かすには陣形をコンパクトに保つ必要がある.間延びしてスペースを与えれば,スピードやパワーに勝る相手に当たり負けする局面が増えてしまう.そういう意味で最終ラインの高さをどこに設定するかは,一番重要な事柄でしょう.


また世代論と教育論も.

実際に,彼らと一緒に何かをやっていくときには,時々迷いが生じることもある.こちらの考えが伝わっているのか,彼らが何を考えているか分からないことがあるから.のれんに腕押し,ぬかにくぎというか・・・.時々,こういうのが親の気持ちなのかなーなんて思うこともありますよ.

サッカーの場合救われるのは,考えは分からなくても得意なプレー,好きなプレーは選手を見ていて分かるので,そういう部分を生かしてあげることはできる


そして,僕が一番しびれたのは言語化巧みな彼が言う以下の行.

代表の試合は特別なもの.言葉では説明できない.説明できて誰もが分かるようなつまらないものじゃない.


かつて中田がいない中盤 - 観察・実験ノートで中田不要説をぶったことがあったが,戦術レベルでしか語れなかった自分のサッカーというものに対する無知を反省するとともに撤回したい.そんな彼は1月22日に29歳になる.