グリー上場

グリーが東証マザーズに上場することになりました。私は初期からのユーザーですし、社長、副社長をはじめ4人のグリー所属者が「友達」にいるので、まずは「おめでとう」です。グリー訪問時の狭ーい事務所からは隔世の感。本当にサービス拡充のために社員一丸となってハードワークをでやってきたのだと思います。


実は、この手のギークが趣味でやっていたサービスがそのまま事業になってしまった、かつ大きな投資が必要ない、事業多角化するとガクンと利益率下がる、会社が、上場するということについては興味をもっています。もちろん上場をやめるということも将来できるわけですが、たとえば、KDDIなどの事業会社にVC分やストックオプション分の株を買い取ってもらう第3社割当増資という資金調達方法もあったのではないかと素人としては思う訳です。ま、これは全くもって余計なお世話なので、この辺でやめておきましょう。


で、これを機会にSNSとケータイについての勉強素材ということで、有価証券報告書を見てみた。
http://www.tse.or.jp/listing/new/200812/12gree-1s.pdf


まず驚いたのは、2008年6月期の売上が29.4億円で、営業利益が10.5億円! 36%!。さらに目を疑ったのが、直近の四半期の売上19.8億円で、営業利益は14.0億円! その率70%! 株価対策でいじった決算だとしても、すげーな。 ローコストオペレーションのたまもの。ちなみに社員の平均給与は29才で540万円だから悪くない。


ではなにをやって稼いでいるのかというと、

  • 広告
  • 有料課金

広告は、バナー広告とタイアップ広告で、制作もやっている。他にはコミュニティ企画・運営。アップされているデータの多くは、ストックされて後々価値を持つものではなく、フローな会話の断片だから、結局、広告になるんだよな。売っているのはデータではなくてあくまでも媒体。


さらに言えば、ストック情報という性格を持つ、@cosmeやカカクコムやクックパッドなどの方が、理論的には情報そのものの収益化の可能性は高いが、でも商品にする手間がかかるし、結局マーケティングコストとして買い手は払うのでそんなにビジネスの規模が大きくならない。だからやはり広告。


もう一方の有料課金であるが、中には「きせかえプレミアム」というアバターアイテムも売るサービスもある。5000円のもあるというから驚きだ。さらにモバゲーと同じ、広告を踏ませて、ゴールドゲットさせて、現金を加えさせて、アバターアイテムを買ってもらうという仕組みも採用。直近の四半期では有料課金収入が全体の70%。しかも直近四半期で前年1年間のこの事業収入の83%を稼いでいるから、今超急成長中の事業と言える。


でも1人あたり売上は直近の四半期の19.8億円を、600万人で割ると、330円。決して高くない。私自身は有料課金サービス使っていないし、グリーの広告で記憶に残るものはないわけだし(PCでしか見ませんが)。


最後に、1株の価格が決まっておらず、企業価値というのがわからない今の時点で、よくわからないままに5年ぐらいの成長性に関して無責任に書くと、まずは超成長中の有料課金ビジネスがどれだけ大きくなるかですね。1人あたり売上も、会員数も上昇余地はあると思うけど、かけ算した数字が10倍にはならないでしょ。行って5倍ぐらいかな。会員数が3倍で1人あたり売上が2倍弱とかそんなものではないの。仮に会員数が6倍になったら、1人あたり単価は330円よりも下がると思うし。したがって四半期売上の上限は50億円とかでしょう。それでも年商で200億円になってしまうわけですが。うまく行けば、3年後にこんなところまで行っているかもしれない。


また広告事業については、モバイル端末向け広告がどれだけ量的に伸び、その効果がどれほどと認識されるかという点ですな(ちなみに現行のPCとケータイのPV比率は1:75。でもPC向け広告とケータイ向け広告の収益比率だとこの差は縮まるし、ひょっとしてPCの方が大きいかもしれないぐらいだろう)。特に現行では、期間ないしはインプレッション売りの広告メニュー偏重だから、効果についてはこれから議論になってくるだろう。


情報獲得指向ではなくコミュニケーション指向の人が広告を見ているのかな? という疑問は常々私は持っている。もちろんコミュニケーションのネタにできるような広告を差し込むというのはあるけれど。だから報告書中にあった「ユーザーのアクティビティを活性化させることが「GREE」のSNSとしての利用価値や広告媒体価値を高める重要な要素であると考えております」の後者の広告媒体価値との因果関係には疑問符を付ける。ゲーム内広告とかは売上にプラスするだろうけど。この事業は直近四半期で6億円ぐらいだから、年商で24億円。今後3倍になったりはしないであろう。


ともあれ、ネットビジネス特有のコストの安さがあるから収益性は高く、仮に200億円企業であっても、営業利益70億円とかたたき出す可能性はある(DeNAは2009年3月に370億円の146億円と予想している)。それが5年後ではなく3年後だったりする可能性も否定できない。だからマザーズで停滞している会社が多い中で、マザーズから1部にも行ける可能性はある会社だとは思う。そうするかどうかは冒頭に書いたことも含めてわからんが。