ロングテールをめぐって

ロングテール理論にケチをつけた | TechCrunch Japanがまとまっているが、ハーバードビジネススクールのElberseの論文で、また議論が起こっている。


Elberseは初出が2007年のワーキングペーパーでもビデオとDVDの販売データを使ってこのことを論じているが、この販売データはニールセンビデオスキャンという実店舗を中心とするパネルデータであるという限界を抱えていた。今回は、RhapsodyとQuickflix(Netflixのオーストラリア版)というネット流通のデータも使っている。


要はテールは伸びているが、ヘッドは低くなっておらず、商品販売の分散化は起きていないという話だ。私も、現在似たような研究をしているが、私が取得した4年以上にわたるデータではテールは伸びているものの(商品分野は音楽ほど多用な商品が供給されず、マスマーケティングがまだ力を持っている分野であることもあり)むしろ集中度が上がっている。


おもしろいのは、Andersonを目の敵にしているとしか思えない、Lee Gomesの迅速な反応で、早々とロングテール理論にだめ出しをしている。ロングテール理論の核は、ヘッド(=実店舗に陳列可能なアイテム数)以外のテールでの合計売上比率が上昇し、そのテールでも管理コストが安いから在庫を選り好みするなというものだ。でもGomesは相変わらず、集中化(裏返しとしての分散化)を議論に中心に据えていてたちが悪い。


分散化が仮に進むかどうかは分野によるし、仮に分散化が進む分野でも、その進展には20年や30年はかかると考えるのが妥当だろう。