ネットワーク界への市場の浸透

本日は仲間内の勉強会。お題は某氏の修士論文。テーマは「市場と非市場との相互作用」。突っ込みどころ満載で、それは会でも言ったので、ここでは少々感想など。


実務の現場を知る、それもシェアウェアとかオープンソースとかCGMのことをかなり長い時間見てきている者が覚える、この手の研究に対する違和感がある。たしかに情報の発信コストは下がった。また興味関心が近い人たちが出会うための取引コストも下がった。でもだからといって、非市場経済的な活動が20年前に比べてそんなに大きな部分を占めるようになってきているような感じはしない。10年前から、5年ほど前までは、情報ってのは希少性だけでは扱いづらい財だからということで、非市場的経済に対する期待は大きく、ヒネマンの本なども話題になったけど、結局市場によって、その部分はどんどん内部化されてきているように思う。


CGMのうち、コミュニティサイトと呼ばれるような、ある場所(サイト事業者のサーバー)に集中的に、特定のテーマに関する情報が蓄積されるようなタイプのものならば、まだコミュニティとしての連帯感みたいなものがある。協働によって何かを作り上げるというようなWikipediaなんかにもこのようなものがあるのかもしれない。だが、ブログのように分散的に、それも自分のスペースとして認識される場所では、AdSenseやアフィリエートを貼り付けて、毎月1万円程度を稼ぐためにやっきになっている人がかなりいる。どういう商品を推奨したり、どういう内容について書けば小金が入るという発想に基づいての情報発信。これは市場経済がネットの世界にも浸透してきているという話で、好きだからやっているとか、誰かのためになるとか、そういう非市場経済的活動ではない。


また、最近ある人と意見が一致したのは、「ブログというのは結局のところ個人事業者の宣伝ツール」ということ。結局、かなりの頻度で長続きするのはそれがカネに関係ある行為であるからというわけである。これはすぐさまお金が入るAdSenseやアフィリエートとはちょっと違うけれど、それでもどういうことを書くと仕事が来るかとか、どういう話題について書くと気の利いた人と思われるかという観点から書かれているエントリーは相当数あるだろう。


私も5年ほど前までは非市場経済にはかなり期待していたのだが、現実はちっともそんな方には進んでいなくて(なかには好きでやっている人がいるけれど)、未だに夢だけを語る研究に対しては「その前提からしてそもそも違うんじゃねーの」と言いたい気持ちが強くなっている。


最後に一つ某氏に言い忘れたことを無責任に書いておく。Crowd Sourcingってのがあるけど、これは市場と非市場の話なのかな?それともやはり内部化の一つの方法論なのかな?