Tailは伸び、太り、Headが下がり、細っているというデータ

Sergei NetssineというWharton Schoolの教員が、DVDレンタルのNetflixの2000年と2005年のデータを比較している。Andersonのブログで知った。ただしAndersonも言っているように、その%による分析にはセンスが感じられず、よくロングテール理論をわかっていないことが逆に露呈している。


幸いなことにNetssineのグループは事前にAndersonとやりとりをしたようで、Andersonが一番興味深いと思ったグラフが彼のブログには貼り付けてある*1。それを見ると、5年の間にTailが伸び、太り、Headが下がり、細っていることがよくわかる*2


化粧品クチコミサイトの商品ページPVを対象とした私の研究では、(%による分析ではなく)絶対値による分析でも、ある時期からTailは伸びこそすれ太らず、Headも下がらないという結果になった。だが、映画のレンタル本数では違う結果が出たようだ。


この結果で私が面白いと思ったのは、18000弱という商品数でもそのような結果が出たことである。私が対象とした商品数は15万程度で、これがAdSenseが表示されるWebページ数やAmazonが扱う書籍数よりもはるかに小さいことが、前述の私の調査結果の一因にあるのかもと考えていた。というのも嗜好が多様化しているからこそ商品数が多くなると考えられるから。だがしかし、商品数が少なくても、嗜好が分散化している(あるいは分散化しやすい)市場であれば、そして「フィルタ」が利用されれば、時間とともにTailが伸び、太り、Headが下がり、細るという可能性が示されたわけだ。


ちなみにDVDは物財なので、この結果が「Netflixは全ての世に出たDVDを仕入れるべし」という方策には必ずしもつながらない。というわけでロングテール理論はその適用範囲が非常に狭いという見解を変えるつもりはないが、まだロングテール理論もちょっとは面白いのかもしれない。

*1:原典のWorking Paper(←ここリンクです)にも当たってみたが、たしかにこのグラフは登場しない。

*2:ただしレンタルDVD業界で店舗に置かれるDVDのアイテム数を私は知らない。もしそれが5000というような数ならば、定義上Tailが太っていることにはならない。