ICレコーダーを使ったインタビュー

この3月からICレコーダーを携行してインタビューを行いはじめた。やっとこさ、慣れてきた。

私のこれまでのインタビュースタイルはとにかくメモを取る。とってとってとりまくるという感じだった。これはマーケティングプランナーをやっていた時の職場の先輩の影響が大きく、特に新事業創出というような仕事を中心にするようになってからはその傾向は強くなった。というのもそういうネタはこちらが用意した定型のインタビューの流れからちょっとはずれた所にこそ宿るからだ。

ところが、このとりまくっていたメモが限りなくゼロになった導入初期。大きな問題点が生じた。コンテクストが自分の頭で追えなくなるというか、追わなくなるのだ。どうせ全部録音されているという甘えがそうさせた。今まではメモを取りながら、ぴんと来たことはノートの枠外に書いて必ず次に質問するようにしていたので、少なくとも2系統ぐらいの処理はしていたことになる。単純に考えると記録の部分は機械に任せてしまい、自分はぴんと来る方に神経を集中すればよいのだが、なかなかそれができず、ぴんと来る回数が減ったのだ。

それでわかったのは、いかに自分が書きながらものを考えていたかということである。特に相手が10分前にしゃべったことばと直前にしゃべったことばが紙の上では一覧性があるために結びついて、これまでは出来ていた「先ほどは××とおっしゃいましたが、今は●●と言っています。これは一見矛盾すると思いますが、△さんの中では整合しているのですか」という本質に切り込むような質問ができなくなっていた。また相手の今し方言ったことばを取り上げて「いま、○○と言っていましたが」というように相手のコミットメントを高めるような技も駆使できなくなっていた。

で、やはりメモをとらなくてはダメだと判断し、少しずつメモをとるスタイルに戻してみた。するとかなり調子がよくなってきた。

ちなみにMP3ファイルを聞きながらのメモ作りはやっぱり正確である。正確故に、情報の断片から様々な推測ができる。大体1.5時間インタビューをすると、A4で7〓10枚ぐらいの分量になるが、これに加えて1枚程度の推測・洞察メモができあがる。この推測・洞察の部分は以前のノートのみの記録の時よりも増えるようになった。

いずれにせよ、スタイルって大事だと感じた。